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 ぼくらはアナログを切り捨てたわけではない。むしろアナログの方が好きだ。
 しかし、リアル本が次々に出せるほど、現実は甘くはないこともわかっている。インターネットが加速するなか、本は売れなくなり、書店もなくなっている。編集者が面白い本をつくろうとしても、リクープできないという理由から企画は次から次に没になる。そのせいで、書店を見渡すと、似たような啓蒙書やビジネス書ばかりが並んでいる。それが本好きのリアル本離れをますます加速させている。読者の核を失った出版社が生き残れるほど、現代の社会は親切ではない。
 この悪循環に終止符をうつのが電子書籍なのではないかと思っている。
 電子書籍は、リアル本に比べたら、はるかにリクープ・ラインが低い。だから編集者や作家のアイディアを活かした作品をどんどん市場に投入できる。そして、電子書籍でヒットした本をリアル本でリリースすることだってできる。
 つまり、テレビに例えていうと、電子書籍とは自由な発想でつくれる深夜の番組だ。実験的なことやマニアックなことを電子書籍という深夜放送のワクで、どんどんやっていき、成功したら、ゴールデン=リアル本でリリースする。リアルと電子はそうやって共存共栄できると思う。

 電子書籍の写真や絵は圧倒的に美しい。印刷の具合で、編集者やデザイナーや作家の意図したものと違う仕上がりになるという事態もおこらない。電子書籍をリアル本でリリースする意味がどこにあるのか、と思う人もいるだろう。しかし、マテリアルを所有する楽しみ・カタルシスはリアル本の方がはるかに勝っている。
 スタジオ・エム・オー・ジーからリアル本を出すことはないが、スタジオ・エム・オー・ジーの電子書籍がヒットしたときに、リアル本を他社から出すことは十分にあり得る。むしろ、そういうことをどんどんやっていきたい。
 スタジオ・エム・オー・ジーは4つの要素で成り立っている。
 1つは電子書籍の出版部門。2つめは、作家でイラストレーターのなかひら まい の作品部門。3つめはScrap Web Magazine編集部だ。そして、4番めの要素が、スタジオ・エム・オー・ジーがここ数年間で築き上げたクリエイターたちとのネットワークだ。
 イラストレーター、画家、写真家、ミュージシャン、プログラマー、編集者などなど、たくさんの人たちと知り合い、いろんな話をしてきた。みんな、アイディアは秘めていても、出版業界の現状では今ひとつ力を発揮できないでいた。そういうクリエイターたちを、スタジオ・エム・オー・ジーは積極的にネットワークしていきたい。彼らと一緒にアイディアを練って、一緒にリスクを背負って、面白い作品を世に出していきたい。そして儲けは誰かが独占するのではなく、平等に分けたい。
 スタジオ・エム・オー・ジーにとって、事業の中枢になるのは、実は、この4番めの部分だ。「クリエイターでつくる電子書籍の出版会社」と名乗っているのはそういうわけだ。
 ぼくらは、この、ちっぽけな枯れ葉の舟で大海原へと漕ぎ出す。幽霊船にあえるのか・あえないのか。岸に着くのか・着かないのか。それは、行けばわかるさ。
スタジオ・エム・オー・ジー 代表取締役 森内 淳
2010年6月23日水曜日
STUDIO M.O.G.

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