|
写真家の小野田麻里さんが名草とべの取材に参加したのは2007年のことだ。フジ・ロック・フェスティバルの帰りの車中で、名草とべのことについて話したら、興味をもってくれた。そして自腹で取材に参加することになった。よほど興味をひかれたのだろう。取材は一度や二度ではなかった。九州から和歌山まで旅をしたこともあったし、紀伊半島を一周したこともあった。
もともと小野田さんは仕事の関係で、地方の農家で働く人の写真や神社の写真などをたくさん撮っていた。小野田さんの写真は、被写体を優しく包み込むような感触がある。ぼくは常々神社を広告写真のようにハイパーに撮る写真に違和を感じていたし、名草とべにまつわる名所はそういう写真では本当のことを伝えられないと思っていた。だから、今回、小野田さんが自分から参加したいと申し出てくれたのをとても幸運に思った。
肝心の名草とべの本は紆余曲折あって、なかなか出版できないでいた。そんなとき、ひょんなことから、スタジオ・エム・オージーが電子書籍の出版社として事業を展開することになった。
そこで最初に考えたのが、小野田麻里さんの写真集だった。リアル本の世界では制作費がかかる写真集はリクープするのが難しくなっている。アイドルの写真集以外、写真集が世に出る機会はめっきり少なくなった。しかし電子書籍なら話は違う。しかも、iPadで見る写真は本に印刷されたものより数十倍の美しさをほこっている。(RGBデータをそのまま使うので当たり前だが)
本来なら名草とべの本を出したあとに、写真集を出すのが筋だが、あえて写真集を「導入」にするのもアリのような気がしてきた。そこで小野田さんに相談したところ二つ返事でOKをもらった。小野田さんの希望で、なかひらのエッセイもつけることになった。そうすることで古代史が苦手な人も、名草とべの世界へといざなえる。しかも全世界で売れるわけだから、日本の美しい里の光景を、摩訶不思議な伝承と共に世界へと紹介できるわけだ。英訳は小野田さん自らやってくれることになっている。
現在、小野田さんが写真を選んでいる最中だ。9月にはリリースしたいと思っている。
(文/森内 淳・スタジオ・エム・オー・ジー 代表)
|