対談●スカンク&ヒューゴ 司会●コワダ TEXT&ILLUSTRATION●STUDIO M.O.G.
コワダ:今回は『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』を観に行きました。
スカンク:監督は『Mr.インクレディブル』のブラッド・バード!
コワダ:ついにピクサーの監督が実写デビューなんですね。
スカンク:アニメーションで何億ドルも稼いでいれば白羽の矢は立つってことか。
ヒューゴ:それだけで話題になるからね。
スカンク:まぁ「やれんのか!?」っていう問題はあるけどね。
ヒューゴ:絵コンテ通りに動くアニメーションとは違うだろうね。
スカンク:そういえば『ジョン・カーター』という作品では『ファインディング・ニモ』を撮ったアンドリュー・スタントンが監督をつとめるんだよね。
ヒューゴ:フッテージの試写なんかも準備されているようだから、かなりの気合いの入れようだよね。
スカンク:この流れを面白いと捉えていいのか、それともアニメーションだろうが何だろうが、とにかくヒット・メイカーに撮らせたいという保守的な発想と捉えるべきなのか。
ヒューゴ:後者のニュアンスが強いかもしれないね。
スカンク:日本でいうと宮崎駿監督が実写を撮りましたって感じなのかな。
ヒューゴ:そう考えると、何がなんでも観たいという気持ちにはなるね。
スカンク:うんうん。
ヒューゴ:たださっきもいったように、アニメーションのように自由に役者は動いてくれないからね。
スカンク:いろいろあるんだろうね、困難がね。ぼくらじゃ想像できないような壁がね。構図もアニメーションのようにはいかないから。
コワダ:日本では『エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督なんかは実写もアニメーションも撮っていますよね。押井守監督とか。どうでした、ブラッド・バード監督は?
スカンク:そりゃ『Mr.インクレディブル』のようにはいかないよね、やっぱりね。何度もいうように絵コンテ通りにはいかないからね。生身の役者を撮影するわけだからね。
ヒューゴ:だからそもそも『Mr.インクレディブル』を期待する方が間違いなんだよね。ブラッド・バード監督のデビュー作というようなとらえ方がいいんじゃないかな。
ヒューゴ:Mr.インクレディブルに比べると主人公のスタイルはいいけどね。
スカンク:それに高層ビルのシーンなんかはアニメーションでは出せない臨場感だよね。アニメーションで同じような場面を観ても、どうってことないかもしれないけど、生身の人間が高層ビルにへばりついている場面はさすがに緊張感があったよね。あれ、まともに観られない人もいると思うよ。
コワダ:実際にビルの表面を使って撮影したらしいですよ。トム・クルーズを吊したらしいですよ。
ヒューゴ:やるな、ブラッド・バード監督!
スカンク:それを引き受けるトム・クルーズも凄いけど。
ヒューゴ:まともじゃない。
スカンク:アニメの主人公は落っこちても死なないけど、トム・クルーズは落っこちると死ぬからね。わかってないんじゃない?
ヒューゴ:むふふふふふ。
スカンク:誰か教えてやれよ。
コワダ:あのシーンだけでも観に行く価値はありますよね。
ヒューゴ:面白かったね。
スカンク:ただ、今回の作品の本当の良さはそういうアクション・シーン以外にあるように思うんだよね。
ヒューゴ:というと?
スカンク:原点回帰というかさ。テレビ版へのリスペクトというかさ。むしろオレはブラッド・バードの敬意の表し方が凄く気に入ったんだけど。
ヒューゴ:テレビ版『ミッション:インポッシブル』って『スパイ大作戦』のこと?
スカンク:そうそう。これはもうWeekly ぴあに連載していた頃からさんざんいってたんだけど、映画版の『ミッション:インポッシブル』のシリーズって、どちらかというと007的な要素が強かったと思うんだよ。
ヒューゴ:たしかにイーサン・ハントってジェームズ・ボンド的ではあるよね。
スカンク:ところが『スパイ大作戦』って、別にヒーローがいるわけじゃないんだよね。あくまでチームプレイだから。それにいつも敵の屋敷やら基地やらに潜入して、相手をだますことでミッションを遂行するんだよ。
ヒューゴ:これも前からいってるけど、どちらかというと『オーシャンズ11』のシリーズが『スパイ大作戦』に近いんだよね。
スカンク:そうなんだよ。映画の『スパイ大作戦』即ち『ミッション:インポッシブル』は、めちゃくちゃ面白いんだけど、オリジナルのソウルをどこかに忘れてきてるんじゃないかっていう不満もずっとあったわけ。
ヒューゴ:わかる、わかる。
スカンク:そこは映画とテレビの違いだからさ、テレビみたいにやっていても地味すぎるっていうのもわかる。だけど、それでも着地点はあると思うんだよね。
ヒューゴ:最初から放棄するな、と。
スカンク:何とかテレビの要素を入れようという姿勢だけでも見せて欲しいんだよね。
ヒューゴ:カケラでもいい、と。
スカンク:そうそう。音楽だけが一緒なだけじゃダメだよね。
ヒューゴ:あと指令を受けるシーンも一緒だね。
スカンク:そういう表層も大事。というか音楽も指令を受けるシーンも絶対に外せないよね。だけど『スパイ大作戦』が『スパイ大作戦』たる要素をもっと積極的に取り入れて欲しいという気持ちはずっとあった。
ヒューゴ:あと渋さとかね。
スカンク:意外と地味なんだよね。地味なんだけどハラハラする。あの感じが何ともたまらないよね。その点、今回の『ミッション・インポッシブル』には『スパイ大作戦』の匂いがプンプンしてたんだよね。
ヒューゴ:そういわれてみればそうだね。
スカンク:今回はきちんとチームで動くし、相手を騙して目的を達成するという基本を踏襲してた。それが凄く良くてさ。ブラッド・バード監督はちゃんと『Mr.インクレディブル』のテンションを実写で出せるのか?っていう見方もあると思うけど、それよりも『スパイ大作戦』をリスペクトしているところを評価してほしい。それだけでブラッド・バード監督で良かったと思ったよ。
ヒューゴ:『ミッション:インポッシブル』が『スパイ大作戦』になった?
スカンク:なったね。いっとくけどね、何でもしきたりってもんがあるからさ。そこを踏み外してもらっちゃ困るんだよね。
ヒューゴ:たしかにね(笑)。
スカンク:敵があまりにもスケールのでかい悪事を働こうとしている点はテレビ版から外れるけど、そこは映画ってことでいいんじゃないの? 大事なのは過程だよね。どうやって敵を追い詰めるかっていう部分。そこはもう合格だと思う。やったね、ブラッド!
ヒューゴ:むふふふふふ。
スカンク:それからさ、こないだテレビでやってた『スパイ大作戦』の仕掛けとそっくりなやつ、出てきたんだよ。スクリーンに廊下を映し出して誰もいないと思わせる装置。もちろんハイテク度は上がってるんだけど、同じものだよね。
コワダ:ボクも観ましたよ、その回の『スパイ大作戦』。
スカンク:わかってんだよ、ブラッドは。普段からやる男だとは思ってたけど、予想以上だね。
ヒューゴ:むふふふふふ。