対談●スカンク&ヒューゴ 司会●コワダ TEXT&ILLUSTRATION●STUDIO M.O.G.
コワダ:今回は『リアル・スティール』という作品を観に行きました。
スカンク:いろんな作品のオマージュ満載の作品だったね。
ヒューゴ:『ロッキー』に『鉄腕アトム』に。
スカンク:いちいちあげていくのが面倒なくらいだよ。
コワダ:それよりもタイトルが『リアル・スティール』なので、鉄をつくる映画か何かだと思っている人もいるかもしれないですよね。まずは映画の内容を説明しましょうよ。
スカンク:いないよ、そんな奴(笑)。
コワダ:いないですかね。製鉄の映画じゃないか?みたいな。
ヒューゴ:むふふふふふ。
コワダ:これ、ボクシングの映画なんですよね。
ヒューゴ:ロボットがボクシングをやる映画だね。
コワダ:『リアル・スティール』の近未来世界では、人間同士でボクシングをやるのが廃れて、ボクシングはロボット同士がやるものになっているんですよね。
スカンク:スタジアムでやるプロフェッショナルのリーグもあれば、地下プロレス的なノリの大会もある。
コワダ:動物園でやる完全にアウトローなボクシング大会もあるんですよね。
ヒューゴ:牛対ロボットなんていう興行もあったりしてね。
スカンク:場末感、満載だったよね(笑)。
ヒューゴ:主人公はそのロボット・ボクシングのプロなんだけど、場当たり的な行動がたたって、どんどん手持ちのロボットを失っていくんだよね。
スカンク:それでお金がなくてどうしようもなくなって……
ヒューゴ:息子の親権を金で売るという愚行に出る。
スカンク:その金でロボットを買うんだよね。
コワダ:そんなことして、いいことあるわけないですよね。
スカンク:ないよねえ。そこは観てのお楽しみだけど。
ヒューゴ:罰当たりな親と立派な息子の物語。
スカンク:そうそう。
コワダ:何だかんだあって、結局、親権を獲得した姉貴夫婦がバカンスに行っているあいだ、この息子と過ごすことになるんですけど、まぁこの親父の情けないこと。
スカンク:息子がアトムっていうポンコツ・ロボットを見つけて、いろいろとチャンスは転がってくるんだけど、このヒュー・ジャックマン演じる親父は徹底的にろくでもない。
ヒューゴ:ほんと腹立ったね。
スカンク:そうそう。普通さ、この手の映画ってダメ親父は出てくるけどさ、ここまでダメ親父は初めてなんじゃないかってくらいダメだったね。
ヒューゴ:この手の映画って、息子と親父が修羅場をくぐることでお互いが成長していくんだけど、成長しないよね、この親父。
スカンク:シリアスなドラマではなかなかないよね、このパターン。
ヒューゴ:よくぞここまでひどい父親を描ききった、みたいな(笑)。
スカンク:父親の言うことの逆をやれば、たいてい上手くいくってどうなんだろうね(笑)。
ヒューゴ:もしかしたらアメリカってこういうことになってるのかな?
スカンク:ダメ親父が大発生みたいな?
ヒューゴ:そうそう。
スカンク:どうなんだろう。映画は世の中を反映するからね。
コワダ:少なくとも普遍的な親子ドラマからは逸脱してましたよね。
ヒューゴ:息子はもう最初から成長してるんだよね。成熟しているというか。
コワダ:大人でしたよね。
スカンク:大人だよ。申し分ないもん。
ヒューゴ:ビジネスの駆け引きもちゃんとやれるし。はったりもかませるし(笑)。
スカンク:その横で親父がおどおどしちゃってね。
ヒューゴ:そうそう。
スカンク:もうね、ビジネス書なんか読みふけるよりもね、この映画を観て、この子のやり方とか立ち振る舞いを研究した方がよほどビジネスに役立つんじゃないかと思ったよ。
コワダ:あとアトムも打たれ強いんですよね。
スカンク:ロボットのアトムね。子供とアトムがダメ親父にバランスをもたらす。
コワダ:『スター・ウォーズ』みたいですね。
スカンク:この親父はアナキンかもね。それを子供によってまっとうな道に連れ戻される。ダメ親父は、自分でどうしても乗り越えられなかった心の壁を、子供の手助けで乗り越える。
コワダ:感動的じゃないですか。
ヒューゴ:考えてみれば、普遍的なファンタジーかもしれないね。
スカンク:しかし、こういう映画が製作される背景って何なんだろうね。
ヒューゴ:自立できない親がいっぱいいるのかな?
コワダ:子供の助言を待つ親ってことですか?
ヒューゴ:それ、なんか深刻だね。映画のノリとは随分かけ離れるけど、実際、そうかもしれないよね。
スカンク:だからビジネス書の話じゃないけど、結局、世の大人は自立していないから、みんな「儲かる方法」なんて本に頼ってるっていう見方もできるよね。昔は、成功した人の伝記は読むけど、マニュアルなんてなかったわけで、結局、自分で創意工夫していたわけだけど、今は違うからね。
ヒューゴ:失敗しても全部ロボットのせいにするというのも象徴的だったよね。
スカンク:責任逃れに奔走する部長みたいな。
ヒューゴ:試合に負けたのはロボットであって自分ではない。新しいロボットを手に入れれば成功するに違いない、みたいな。
スカンク:責任を部下に押しつけてクビをすげ替える上司の構造だね。部下に責任とらせてるようじゃいつまで経っても勝てっこないってことか。
コワダ:深いですね、『リアル・スティール』。
ヒューゴ:結局そういうことだよね。最近のアメリカ映画ってこういうテーマが多いね。リーマンショックの影響もあるんだろうね。
コワダ:究極の他力本願ってとこありますからね、金融はね。汗かかずして儲ける、みたいな。
スカンク:冷や汗はかくだろうけどね。
ヒューゴ:むふふふふふ。
スカンク:結局、親父の開眼がクライマックスにつながるんだけどね。親父曰く「オレが片をつける」みたいなね。
ヒューゴ:初めて親父が奮起する(笑)。親父さえ本気になればポンコツ・ロボットだって最強になれる。
スカンク:マニュアル通りだったら、ポンコツじゃ勝てっこないからね。親父があらゆることを引き受けたときに本当の力が発揮される。
ヒューゴ:だからライバルの方がよほど賢くて、マニュアル通りの道を歩んでいないアトムは手強いって気づいてたんだよね。
スカンク:気づいていないのは親父だけか(笑)。
コワダ:だけど最後は頑張ったと思いますよ。
ヒューゴ:いろいろ親父の悪口をいったけども、この親父が最後に行き着いた答えって大事だと思う。
スカンク:ビジネス書を読みふけるよりも、この映画をじっくり観た方がよっぽど出世できるかも。
ヒューゴ:そういうことだよね。
コワダ:ますます息子に感謝じゃないですか。
スカンク:この映画さ、うっかり子供と一緒に映画館に行ったダメ親父は行き場を失うね。
ヒューゴ:帰りにファミレスかなんかでメシ食ってて「今日の主人公、お父さんみたいだったね」とかいわれたりすると辛いかもね。
スカンク:その場で玉砕だね。
コワダ:でもああいうダメなお父さんは子供を映画に連れてったりしないんじゃないですか。
スカンク:あ、そうか。この主人公の親父も、息子を映画に連れていかないタイプだったからね、最初はね。
ヒューゴ:むふふふふふ。